新潟地域文化デジ蔵セミナー長岡開催

去る2002年6月27日(木)長岡市にて 「新潟地域文化デジ蔵セミナー」が開催されました。

長岡会場
■と き/平成14年6月27日(木)
■ところ/ハイブ長岡 2階 会議室

◆第1部:講 演

[演 題] 古文書等のデジタルアーカイブ実践事例紹介
[講 師] 野中 治 氏 (富士写真フイルム 情報システム部)

「国立国会図書館(以下NDL)の明治期のデジタル変換」などをはじめとして国内の各種博物館・図書館・大学の収蔵する古文書の「デジタル化」を手掛け、紙文化財におけるデジタルアーカイブ事業の実務面におけるスペシャリストとして注目されている、富士写真フイルム情報システム部の野中氏にご講演をいただいた。

◆第2部:パネルディスカッション

[テーマ]

「地域万歳 ―地域の文化を見直し、新たな地域の財産を創造する―」

[パネリスト] 亀川 純一 氏 (越後の歴史と文化を語る会「古志の会」代表)
渡辺 健一 氏 (十日町情報館事業係主査)
宮尾 亨 氏 (新潟県立歴史博物館主任学芸員)
野中 治 氏 (富士写真フイルム情報システム部)
[コーディネーター] 田中 カツイ 氏 (ライフコーディネーター)

前回の新潟市開催に続く第二弾として、中越に会場を広げ“地域の文化を見つめ、活かす”ことをテーマに、一般市民の立場から、あるいは行政の立場から、そして民間企業の立場として4人の方にご登場いただいた。各人のお取組みに加え、渡辺様には十日町市でのデジタル化の実例をご紹介いただき、デジタル活用について、加えてそれが地域にどんな効果をもたらすのかなどを語り合っていただいた。

亀川 純一
古文書など貴重な資料はコピー制限があったりして全部見たいと思っても見れないものがある。傷つけずに誰でも閲覧できるような形で提供してもらいたい。また、これからは音声や映像も残していく必要を感じる。
渡辺 健一
“地域の人がちょっと汗をかいて見つめなおす”作業でデジタル化の事例をつくった。汗をかいて見つめなおすことは、結果地域おこしや地域づくりにつながった。今後ますます産官学の連携が求められている。
宮尾 亨
デジタル化というのはあくまでも手法であって、大事なのは「コンテンツ」であろう。デジタルの発信が、結果として実体験に結びついた「縄文学校」のような事例もある。
野中 治
デジタル化は一言でいえば“今後避けて通れない、便利な物”。しかし、将来的に50年・100年後にもきちんと残るように、再生機や保存形式を考えなくてはならない。

■各人の取り組みについて
田中
 今日は、フロアーの皆様とご一緒に考えるということで進めたいと思う。まずはパネリストの皆さんの自己紹介を兼ねて、お取り組みなどお聞かせいただきたい。
亀川
 「古志の会」の代表をしている。私どもの会は純粋に民間の歴史好きな人たちが集ったのが始まりで、もう15年経ち、今では会員が163名ほどになった。越の国という言葉と、会の名称は文字で「古い」に「志」と書くが、いにしえ人に志を学ぼうという気持ちを込めて古志の会という名前をつけた。
 私たちは歴史の裾野を広げたいと考え、愛好者を募った。「歴史を学ぶということは楽しいことなんだな」というきっかけづくり、そして越後の国を対象にした文化と歴史を学ぶ会にしようということで立ち上げた。今では県内各地から参加者がある。
 内容は、約2カ月に1回講演会を開いたり、古文書の解読講座をやってみたり、恒例で年に1回はバスの研修旅行を開催している。
 私どもとしては図書館や市役所などで所蔵している様々な資料を、できるだけ実際に自分の目で見て、より深い勉強をしたいという思いがある。もう少し深く勉強したい方のための便宜をおはかりいただけないか、という願いがある。
 それからもう一つは、女性や若い方へもぜひ参加を呼びかけたい。今後どのようにアピールしていくかというところも課題になっている。
田中
 その膨大な資料を見てみたいという揺り動かされているものは、先ほどのお話から“歴史を好きだ”という気持ち、“歴史を楽しむ”というところが基点だと伺ったが、その膨大な資料を目の前にした時に、資料をどんなふうに使ってみたいと思われたのか。
亀川
 実は、膨大な資料があるにもかかわらず、私ども一般市民が図書館にお邪魔をさせてもらってもなかなか見ることができない場合もある。中には貴重文書もあるのでなかなかコピーができないとか、全部見たいけれどもなかなか見れないということがある。こういったものは新聞のようにマイクロフィルムなんかに撮ってあると非常にありがたいなと思う。
 具体的な例として、かつて長岡市史編纂の途中で見つかった『長岡日報』のことがある。これは非常に珍しい新聞で国立国会図書館や東大の史料編纂所にも1部か2部しか現存していないものだったが、それが市史編纂のときに160日分ほどまとまって出てきたことがあった。それで編纂室のほうに何とか予算をつけてマイクロフィルム化してほしいというお願いをしたが、なかなか手間と時間とお金のかかることでもあり、とうとうそれは実現できなかった。
 その間に160部の貴重な長岡日報はとうとう散逸してしまい、今では行方が分からなくなってしまった。実は明治44年というのは長岡市制が明治39年にできたすぐあとの時代の新聞で、長岡日報というのは経済史だったということもあり、そういう点で非常に注目していたが、大変大事なお宝を逃してしまったという点ではあのとき何とかできなかったものかと大変悔やんでいる。
宮尾
歴史博物館は3年前にオープンした新設の博物館で、実物のレプリカや、ジオラマを使った展示を主として、その場所で実際に「体感する」ということを基本にしている。一方、インターネットを使ってデジタルの情報発信をする仕組みも用意している。そこでは新潟県の指定文化財の写真をデジタル処理し、インターネット上で公開もしている。
 自分自身、考古学が専門なのでそちらからの一例をあげると、考古学の発掘調査をすると、調査の結果が発掘調査報告書という刊行物にまとめられる。これが残念なことにいわゆる行政文書というのか、刊行部数が非常に少ない。村などの規模で行う調査だと300部ぐらいしか作らない。これを関係諸機関に配布すると、ほとんど一般には出回らないことになってしまう。
 しかしながらこの10年くらいで変化があった。パソコンの普及によって、研究者もその報告書の原稿をパソコンで作成するようになり、研究者内だけの話になるが、報告書のデータのやり取りができるようになった。これは重要なことで、例えば遺跡を展示室で再現するときに役立つ。そのときのどの場所で、どういう配置でそれがあったかということがデジタル情報で手に入れられるので、遺物を運んでくればそのままの状態で正確に復元できるようになった。
 また、今年夏に企画展として予定している「奥三面展」での話になるが、「GPSデータ」という地理情報を活用すると、天文学をやっている方の知識とを総合したところ、縄文時代のその地域の星空と今の星空が違うこともわかったりした。
田中
 ここで野中さん一言、デジタル化とは何かと言われたら、何とお答えになるか。
野中
 実際に仕事で感じるのは、避けてとおれない、便利なものだなということ。例えば先ほどの第一部でもお話したが、見えないものが見えるとか、デジタルだからこそうまく再現できた事例もある。
田中
 なるほど。デジタル化は便利、見えないものが見える、見えたままに再現できると、そのあたりが今日のテーマではないか。地域を見直し、地域の財産を再創造するというところとどう結んでいくのかを最終的に深めていきたい。

■十日町市のデジタルアーカイブ事例
渡辺
 十日町情報館とは、簡単に言えば「図書館」である。単にたくさんの本が並んでいる図書館ではなく、これからの時代は紙だけではないんじゃないかというところがもともとの設計のコンセプトにあった。よって、コンピューターが多く設置されている。建物の中に約55台くらいのコンピューターがあり、全てのコンピューターがインターネットに接続されている。紙ベースの情報というのはそれはそれなりに価値があるが、一方、これからはやはり瞬時に、リアルタイムに、最新の情報をどうやって手に入れていくのか、ということを私たちは考える必要もあるのではないか、そういったところに今の情報館の価値がある。十日町周辺の地域からすると非常に大きな、これまでになかったタイプの図書館である。
 今日は私の手元にある1枚のCD-ROMを紹介させていただきたい。
 このタイトルは『とおかまち大辞典』だが、「デジタルアーカイブ」というサブタイトルがついている。
 平成11年に新潟県高度情報化推進協議会という組織があり、その組織の実験事業として作った。そこで何か地域のものをデジタルアーカイブとして残せないものだろうか、ということで十日町にお声がけ頂いた。
 この事業に取組もうとした最初に、県の担当者の方から「ちょっと地域の人が汗をかいて地元をもう1回見つめ直す、そんな作業ができれば比較的簡単にこのCD-ROMというのはできるんだよ。それを十日町から実践してもらいたい」というお話をいただいていた。
 制作の目的は、生活に密着した雪、雪という地域資源から派生する暮らしだとか、知恵だとか、人や技、様々な形態の「雪の文化」に関するデジタルアーカイブを構築して後世に伝え残すというものだった。 −CD-ROM実演−
 内容は、全部で七つのカテゴリーに分かれている。「自然」「住む・暮らす」「行き交う・集う」「利用する」「楽しむ・遊ぶ」「春を呼ぶ・祈る」、それから「雪祭りの歴史」というこの七つで雪というものをとらえている。今日はその中の2つを紹介したい。
[戦後の雪祭り映像]
 これは実は昭和32年に撮影された物で、今のデジタル8ミリではなくて当時の8ミリフィルムで撮影されたものだった。これをぜひ残したいということで、デジタル化をした。昭和32年の映像でありながら、これは何とカラー映像で残っている。
 いわゆるアナログとして残しておいたのではいつかは劣化してしまう、ものがなくなってしまうというのを何とか防ぐ手段としてこのデジタルとして保存するということに取組んでみたというのが一つの例といえる。
[雪国の昔話]
  これは市内に住む当時70代だった女性の方の昔話を音声と映像で収めた物。ぜひこの昔話を語り継いでいくというためにこれを残していきたいという思いがあった。
 デジタル化とは何ぞやとお思いの方もたくさんいると思うが、一つの具体例としてお分かりいただけたのではないかと思う。また、このCD-ROMは、非常にありがたいことに日本視聴教育協会の昨年度「全国自作視聴覚教材コンクール郷土学習教材部門」で優秀賞をもらった。そのときの審査員のコメントに、「これから郷土学習教材を企画制作しようとする他の市町村にとって、よい模範になる」とあった。
 これからの課題としては、地域の資源のデジタル化を今後も継続し、ぜひ市の計画の中にもきちんと位置づけて予算化をして第二弾、第三弾と進めていくべきではないかなと思う。
田中
 具体例として、デジタル化ということが少し見えたお話がいただけたようだ。ここで、会場の皆様から少しご意見を頂戴したい。
質問者(脇屋様)
 新潟地域のこの文化を語る中で、雪国学というのか、「雪」が大きなキーワードではないか。雪に関してはいろいろと不便だという考えがあるが、逆に、むしろ雪国越後というのは太古の時代から文化の発信地というか、特に火エン土器の分布が丁度今の新潟県の地域にほぼ一致していることもあるし、雪が降ることによって、逆に動物の狩をするには非常にいい地域であったと思う。
 また、明治時代の人口の調査をやったところによると、江戸や大阪よりも私たちのこの越後の国の人口が一番多かったという事実がある。ということは、この雪国の越後、雪というのは人間の生活にとって弊害ではなかったという証明ではないのか。すると越後からいろいろな発信をしていたという、当時の情報発信基地はこの我々の越後であったと思えてならないが、どうか。
田中
 今のお話はぜひ後半の中に入れさせていただいて、合わせて私たちがふるさとを見直すという目的を考えたい。

■デジタルで残すことへの課題
亀川
 さきほどの十日町さんの事例が非常に刺激になった。こういった手法である程度いろんな方に見てもらえるということは、確実に年齢層・男女の差が克服できるのではないか。
 今後は古文書だけではなくて、音声資料とか映像資料もこれからは残していかなければならないと感じる。
 例えば、民謡などは文字で残されても、音として保存されていなければ、民謡の調子・テンポや合いの手などがどういうものだったのかわからない。音が残されていれば、そのルーツが研究できたり、伝播の歴史が解明されたりする。
 私どもの民間の立場としても県の機関や県内の市町村などで、「音」をCD-ROMなりにやはり劣化しないようにおこしていただいて、ぜひ一般市民の我々がいつでも聞けるような状態に、聞けるようなチャンスを作っていただきたい。
田中
 なるほど。渡辺さん、もし行政ということでお許しいただけるのであれば、今のご意見を、ご自分の経験“ちょっとみんなが汗をかくと作れるよ”というところから始まってCD-ROMが生まれていったというお話と合わせて、どのように受け止められるか。
渡辺
 もともとお話をいただいたときに、“地域で汗をかく”というのはどういうことなのかと考えてみた。それはもちろんその仕事に直接関わるということも含まれるが、地域のことをもっとよく知ることによって、これがいわゆる地域おこしだとか地域づくりなどに結びついていくのではないか。それらを自分たちで気づくべきなのであり、きっとそれを総称して「汗をかいてやってみたらどうか」というご示唆をいただいたのではないかと思う。
 先ほど私がお話をした新潟県高度情報化推進協議会というところも産学官が連携して事業を推進していた。決してひとつの分野だけでできるようなものではなく、みんなが一緒になってやらなくてはいけない。官民連携の交流には実質のある組織づくりが重要ではないか。
 例えば岐阜県だとか京都市だとか、こういったいわゆるデジタル化の先進地域というのは、官民連携というより、おそらく民主導型で組織づくりが進んでいるのではないかと思う。この新潟地域デジタル文化研究会もぜひ行政を巻き込んではどうか。
 行政側は地域資源のことは知っていてもそれをデジタル化して残すというような発想にはなかなか結びついていかないし、その手法も知らない。
田中
 では、具体的にどんな支援策があるのか、野中さんにお聞きしたいのと、併せて研究会事務局から、総務省のデジタルミュージアム構想についてご紹介いただきたい。
野中
 私は十数年古文書等のデジタル化に携わっているので、全国各地を訪れる。東京にいる利点は、中央官庁の情報が多く入ってくること。ただし、それら情報や予算など含めて、全ては地方に下りていっている。しかし、それがなかなか末端まで理解されていない。うまく伝わっていない。伝わってないがために実行に繋がらない。実際町や村へ行ってみるとこういうことをしたい、ああいうことをしたいと、皆さん日ごろ思っていらっしゃる。ただ具体的にどうしたらいいか分からない。それから予算がない。
 ところが最近では例えば岐阜県では非常に情報が活用されている。したがってどんな予算がどういう形で下りてくるかが理解されていて、全国的にも岐阜県は突出しているぐらいいろいろな予算をお使いになっている。その辺は知っているいないの世界だと感じる。
事務局(阿部)
−セミナー配付資料「総務省が推進するデジタルミュージアム構想について」説明−

■残すべきもの“コンテンツ”が持つ価値
田中
 亀川さんの質問から、私たちが本当にほしいもの、やってみたいものという動きが、誰かがしてくれないとか、予算がないとか、どうしてくれるんだとお互いが言い合うような対立の構図の時代から、一緒に進めていくためには情報の共有、そしてみんなでこの地方の時代を一緒に作って行こう、我々の歩み寄る道や進むべきフィールドを作っていこうというところに本日のステージの意義がある。
 先ほど参加者の方からのご発言に、私たち新潟、越の国は火エン土器の時代から、どうやら全国的なわが国の情報発信基地だったのではないかという投げかけがあったが、これに対してどうお感じになるか。
宮尾
 人が動いている証拠というのは考古学をやっていくと遺跡の中で出てくるものである程度見えてくる。その一つが先ほど質問の中で出た火エン土器であり、これが今のほぼ新潟県に相当する地域で発見される。今の新潟と同じようなまとまりを示す一番最初の段階になる。
 同じ時期、日本列島に広く広がるものがある。それは、新潟県内の一番西側、糸魚川や青海町の「ヒスイ」である。これが全国に広がっていっている。ヒスイというのは非常に硬い石で、これを加工して細長く鰹節みたいな形にして真ん中に穴を開けていく。それだけ硬いものを加工するので相当の技術がある。その相当の技術を持っているものは多分ヒスイを採集することのできる地域だと思われるが、そういった技術力を背景に、その土地の知識、今のデジタル化の話の中でいうと“コンテンツ”にあたるもの、これがしっかりあることが前提になって、そこから広がっていく。
 ここで雪国の話が関わってくるかと思うが、雪が降るということは、今の生活の中では車や列車を多く利用するので、交通の障壁になる。しかし、例えば冬に雪が降ることが分かっていて、雪が降ったら降ったで動くのを諦めてしまえば、雪というのは決して邪魔でも何でもない。逆にヒスイを加工するというようなことを、その雪で閉ざされて何もできないときにやればいいのであって、そういう考え方が逆に成り立つ。 やっぱりデジタル化というのはあくまで手法であって、大事なのは中身、“コンテンツ”それも技術力とか中身をしっかりしなければだめだと思う。
田中
 “コンテンツ”そのものがどういう価値を持とうとしているのか、続けていこう、引継いでいこうとするものは何か。これらを受け継いでゆくために、うまくさまざまな智恵と仕組みを使いながらやっていく必要性を改めて知ることができた。

■デジタル化の可能性と発展性
渡辺
 まずデジタル化を進めていく上での問題点といわれることだが、私どもがこのCD-ROMを作って一番重要に感じた部分は、著作権のクリアーの問題だった。この問題はデジタル化をしていく上では絶対欠かすことのできない問題であろう。
 先ほどの話の中でこのCD-ROMを作った目的について、作る過程で自分の地域の何かに気づく、この気づきが地域の再発見の心を養ってふるさとを思う心を育てるんだ、という話をしたが、これは自分から地域づくりをやっていくという部分につながるのではないか。
 そしてもう一つ、このCD-ROMを作ったもう一つのきっかけがあった。実は小学校4年生の社会科の教科書に「寒い地方の人々の暮らし」という単元があって、その題材としてわが十日町市を取り上げている教科書が3社ある。この3社の教科書を使っている学校から、12月ごろになると町に対して問い合せが殺到する。ほとんどは、例えば道路のわきに穴みたいなのがあってそこに雪を流すのはどうしてですかとか、そういう素朴な疑問が多い。そういう人たちに少しでも雪国のことを知ってもらいたいということでそのCD-ROMを作ったという経緯がある。
 その裏には、地域間の交流に結びつけたいという思いもある。例えば今は相手は小学校4年生で、こちらは行政という立場で対応するが、将来小学校4年生のときに何かしらの関わりで「十日町」と交流をもったということが、大きくなってからこの地域と人々の交流だとか、もっと大きくいえばその地域とこの地域が交流できるだとか、そういうところに結び付いてもらうということもひとつのデジタル化の、CD-ROM作成の目的と言えるのではないかと思う。
宮尾
 最後に、今自分が関わっている中郷村の「縄文学校」の話をご紹介したい。これは同地域の縄文の遺跡の土器をデジタル化して、閲覧できるように公開しているが、それを見た村の人たちからぜひ作ってみたいという声があり、そこから始まって、縄文学校という市町村の広域の補助金をもらって実施している。日本中で縄文土器を作ろうという講座は他にもたくさんあるけれども、さらに地域に根ざした取り組み、腰を落ち着けて取り組んでいるのが特徴だ。近くに遺跡があるということはその地域の粘土で作ったに違いないということで、粘土探しから始めて、土器が作れるような素地土にして焼物の基礎の基礎から取り組んでいる。そういった活動を見ていると、先ほども述べたように、デジタル化して発信することでまず広がった、興味があってその興味を今度は育てていく。育ててそれをまたデジタルに載せるという、そういうことが大事なんだと思う。
亀川
 やはり民の話をもっと官の方はもっと耳を傾けて、小さいことでもいいのでぜひ聞いていただきたいと思う。私どものような一般市民の歴史の会にとってはデジタルアーカイブ化といわれても何のことやらさっぱり分からないというのが本音だった。そういうところで、できれば博物館や図書館、公民館、視聴覚ライブラリーなどの行政の方々から今のような手法をいろいろ教えていただきながら、私たち民も、独自に何か新しいものを自分たちで作れるかもしれないというような気持ちになれたし、非常に勇気が湧いてきた。
野中
 最後にデジタル化に対する警鐘を鳴らして終わりにしたい。それはデータ保存ということを考えたときにデジタル化というのは便利だとさっき言ったけれども、最後に本当に残るのかなと。
 私たちはデジタル化でいろいろなことを復元したり、保存したりできる。ただし、それら全てに共通して言えるのは、もしその再生の機械がなくなってしまったらどうなるのか。将来的にそれが未来永劫ずっと続くとは限らない。機械がないので再生することが出来なくなる。
 そうすると今後の我々の課題、我々メーカーも含めて、データ保存というものをもっと真剣に取組まないと、将来的に50年・100年後でもやはりきちっと残っていることを考えていかなくちゃいけない。デジタル化は便利だけれども、将来的なことも考えていかなければいけない。
田中
 ややデジタル化ということに集中しながら少しお話をくくる時間を取れたようだ。改めてきょうのテーマを見ると、“地域の文化を見直し、新たな地域の財産を創造する”とある。後段の新たな地域財産の創造、その直近の具体例として先ほど事務局からも少しお話をいただいた事例と、とりあえずは野中さんの警鐘も念頭におきながらも、まず着手した場合、当面の効果としてはまずそれを掘り起こすことによる地域の「再発見」、それから財産を発見していくというところから「人づくり」というものが見えてくること。さらに実際に作業するということから「雇用の場」というものも見えてくるのではないか。そして、成果物をとおして実はそれが大変な地域の発信源になってくれる。成果物が第二の成果、第三の成果を次々と生んでくるのではないか、この辺がこれからの時代を生きていくための、ひとつの財産創造というところにもつながるのではないかと強く感じた。
 本日のセミナーを契機にそれぞれの地域で今後もご一緒に考えていただければ大変ありがたい。

(火エン土器の「エン」の字はパソコンに表示されないので、カタカナにしました)

参加者の声
とても良いセミナーでした。最初は第1部のみ聞いて帰ろうかと思いましたが、最後まで聞いてしまいました。パネリストそれぞれの立場でのお話を聞くことができ、大変満足しております。またこのような企画がありましたらお知らせください。(長岡市 K様)
今後このようなセミナーが、数多くひとりでも多くの参加者があるように様々なPRをしたり、活動を継続してください。(長岡市 O様)
郷土芸能、わらべ唄なども保存・伝承していきたい。セミナーは大変有意義だった。今後参考にしたい。 (長岡市 W様)

セミナーを通じて、第一部の野中様のご講演で「デジタル化」の一端を知り、第二部のパネルディスカッションでは各パネリストの方々の活動が聞き手の共感を呼び、あるいは新しい方向性の発見につながるなど、充実したセミナーとなりました。

●今回の長岡会場パネルディスカッションが、FMながおか様のご協力により、去る7月21日(日)11時から 「FMながおか76.4MH」でオンエアされました。

(以上)


2001©新潟地域文化デジタル化研究会